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東日本大震災に伴い全国に避難されている方々のための地域情報サイト

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ひとりのために力をあわせられる地域社会をめざして

一. 自己紹介

コープあいちの向井です。大震災から4年経過、避難されている方も支援に関わる方も体調はいかがでしょうか。私事で恐縮ですが、私の父は牧師で74歳の時長田町で阪神大震災に遭い、仮設住宅と復興住宅で単身生活を送り2003年6月に他界しました。父は高齢者が孤立する仮設住宅の生活環境や、社会的つながりを喪失した生活の及ぼす影響を機会あるごとに記しています。それは私の一つのものさしです。東日本大震災・原発事故からの生活再建はさらに長期にわたるであろうことを考え、肩の力を抜きつつも、今後につながる環境づくりに努力しているところです。私が関わっている愛知県被災者支援センターで大切にしてきたことと、私自身の思いを紹介します。

二. 全ての世帯の健康状態や生活状況をお聞きできる関係をつくる(全世帯訪問)

避難生活が長期化していることから、愛知県被災者支援センターでは昨年度、保健師とともに受入被災者登録している全世帯訪問を行いました。その概要は以下のようです。

1)愛知県内の登録避難者は456世帯1,116人です。(5月31日現在)
◯福島県が最も多く6割を占めます。岩手県、宮城県、福島県の他に、青森県、茨城県、栃木県、東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県からの避難者もいます。

2)平成26年度に生活状況を把握する個別訪問を行いました。
◯愛知県被災者支援センターでは、名古屋市以外に居住されている282世帯に対して、保健師・市町村担当者・センター職員でチームを組み7月21日〜3月27日に訪問を行いました。訪問または電話の聞き取りができた世帯は、計164世帯(94%)でした。
◯名古屋市に居住されている193世帯に対しては、市の保健師による訪問が6月9日〜7月18日に実施されました。(訪問または電話の聞き取りができたのは139世帯(72%)でした。

3)個別訪問の結果(愛知県被災者支援センターで訪問できた203世帯について、個別訪問で把握した状況より)

  1. 世帯主の性別・年代等について
    • 世帯主は男性56%、女性44%です。
    • 世帯主の年代は多岐にわたりますが、20代〜40代が約7割です。
    • 大震災後に子どもが誕生した世帯の割合は19%です。
    • 配偶者と離れて暮らす母子父子避難が10%、母子父子世帯が8%です。
  2. 同居家族の健康状態について
    • 「健康状態がよくない」家族がいる世帯は23%です。
    • 思ったように睡眠がとれていない家族がいる世帯は30%ありました。
  3. 近所づきあい・交友関係・悩みが話せる相手について
    • 近所づきあいが、家を行き来する等「活発」である回答は27%、「あいさつ程度」が47%、「ない」は14%でした。
  4. 生活再建について
    • 正規職員が世帯にいる割合は44%でした。また、非正規職員・パート職員が世帯にいる割合は21%でした。
    • 今後の見通しについては、「愛知県への定住希望’が37%と最も多く、「帰還したいが、時期は未定」が10%、「未定」は34%でした。
  5. 今後必要な支援について
    • 訪問で「要支援度が高い」「緊急度は高くないが、支援や見守りの検討が必要」と訪問者が捉えた世帯は31%でした。
    • 自治体への相談(ある:19%)以下抜粋

      ・子育てに関わること(入園希望・進学について)
      ・ 医療(医療費助成、医療機関がわからない)
      ・ 住宅(公営住宅入居希望・住宅の借り上げ制度)
      ・ 生活保護について
      ・ 就職情報(市の臨時雇用、ヘルパー関連の職)
      ・ その他(市の情報が入らない、町内会の加入方法、避難者間の交流を希望)

    • センターへの相談(ある:23%)以下抜粋

      ・話し相手・相談相手がほしい(避難元が同じ方、同世代の方と交流したい等)
      ・ 精神的に不安定な状況下における必要時の支援
      ・ 子育ての相談(不登校、いじめ、出産後サポート)
      ・ 放射線の健康被害に関する医療機関の情報等
      ・ 就職情報(現職離職後の不安)
      ・ 生き甲斐の場・ボランティア活動)

訪問結果から要支援度の高い方の割合が少なくないと実感しました。愛知の固有性ではないと考えられることから「世帯訪問は、登録情報を把握するすべての団体・機関が行う」ことが望まれます。また「それが可能な部署・組織が登録情報を扱う」時期にきています。加えて、被災・避難生活に起因する困難を抱えておられる方々に、安易に「避難すべき状況ではない」等の言葉を伝えるべきではありません。

三. 「一人ひとり」を支え、力になれる多様な相談支援体制をつくる。

  1. 愛知県被災者支援センターで、2011年7月に発足したパーソバルサポート支援チームは、その都度に共通する課題について話し合い、また具体的な相談支援に関わっています。隔週水曜夜のミーティングは、今年7月15日で94回目となり、課題に応じて新しいメンバーが加わってきています。
  2. これまでの特徴的な関わりを紹介します。
    1. 震災直後から、弁護士会・司法書士会・法テラスによる支援制度の相談がスタートしました。電話だけでなく、交流会に参加したり希望世帯に訪問しての相談も行いました。原発事故の損害賠償のADRや損害賠償裁判では、弁護団が継続的に説明会を開催しています。
    2. 放射線による健康被害に関する健康相談や甲状腺の診察では、医療生協を始め理解ある医師・看護師の皆さんの相談会が開かれています。昨年は、放射線影響や震災に伴う心身状況や疾病に理解ある医師・医療機関を増やしたいという願いから、愛知県保険医協会と協力して機関誌で6回にわたって避難・被災の実際を連載しました。
    3. 心のケアでは臨床心理士会が継続的に無料相談を案内し、交流会等にも参加して食事の機会も活用しながら声を聞いています。支援に関わるスタッフも臨床心理士さんから「世帯訪問の心構え」を学習び、また面談をうけてセルフケアに勤めています。
    4. 外国人避難者について、日本語が話せる方でも翻訳・通訳が必要なことに気づき、外国人支援の専門家や団体との協力関係をつくりました。福島県によるWBC検査の案内や、支援センターからの「近況アンケート」を翻訳・封筒にも母国語で記載して届け、回答が増えています。中国語、タガログ語など幅広く対応できる大変力強いネットワークで、訪問時にも協力を得ています。
    5. 全世帯訪問では保健師が大きな力を発揮しています。訪問前には、陸前高田市で長期派遣保健師として従事した方から、避難生活と支援課題の変遷について学びました。訪問は、市町村担当職員と、保健師、センタースタッフの3名体制とし、行政保健師の都合が合わない場合は在宅保健師会の協力で訪問体制をとりました。
    6. 生活の自立にむけて、母子自立支援、キャリア支援員。日常生活では「くらしたすけあいの会(子育てや家事援助)」「ライフプランアドバイザー(FP、家計相談)」「ケアマネージャー(介護認定など)」が、交流会の相談コーナーに参加しています。
    7. 食品の放射線検査では、東海コープ商品安全検査センターなど全国の生協の検査機関が協力して行っている「食事摂取量調査(陰膳方式)」の結果を紹介しています。
    8. 一昨年と昨年の大交流会の相談コーナーでは、分野の異なる相談員が複数で相談をうける体制をとり、相談員相互の学び気づきになっています。

一人ひとりの声をお聞きしてそのニーズを開示すれば、より多くの相談支援者が関われることを実感しています。そのような関係を適正かつ有効に進められる力が求められます。

四. 市町村圏域で、一人ひとりをサポートできる環境をつくる。

  1. 広域避難の生活が抱える多様で複合的な問題は、行政機関だけで受け止められるものではなく、民間も含めた柔軟な連携が不可欠です。愛知県被災者支援センターでは、今年度の課題を以下のように考えています。

    現状:震災から4年が経過しても、不安定な状態に置かれた方が多く、生活状況は日々変化している。受入被災者の避難生活が極めて多様化しており、多様なセクターによる包括的な支援体制の構築が急務である。

    目的:受入被災者の生活状況を把握し、昨年度の状況を踏まえ、個別支援につなげる。多様なセクターと共に地域で受入被災者を支援する体制づくりを進める。

  2. 受入被災者の在住する市町ごとに、各世帯の状況をもとに支援体制について協議を行い、健康状態や生活状況を確認し、困りごとの相談等を行うための進め方を相談しています。さらに多様なセクターによる支援体制をめざし、9月には個別支援のための研修会を開催します。そうした積み重ねにより、市町村等の条件に応じて、市町村担当者、同福祉部局、保健師、社会福祉協議会、民生委員、児童委員、地域包括支援センター、NPO、協同組合、その他専門家及び支援団体等が有効に関われる関係づくりをめざしています。

    「広域避難」における個別支援は初めての経験であり、研修や情報共有の進め方も創造の途上です。

五. 当事者の力を生かす。

重要なのは、こうした環境づくりが被災当事者の参画のもとで進むことです。私自身は、大震災と原発事故で突然に余儀なくされた被災・避難生活に対して、一人ひとりが自分の意思で選択し判断し生活設計できる環境を整えることを重視しており、外在的な施策で追い込むことを是としていません。つながりをつくり、それぞれの持っている力や関心を生かすこと心がけています。事例を紹介します。

  1. 「子どもたちに農業体験をさせたい。」農園を借りて、サツマイモを植えて苗植え、収穫体験を企画。
  2. 「誰とも話せない。」本人の気持ちにあった交流会を企画して、同じ気持ちの方に呼びかける。
  3. 「母子避難・中通りのママの会をつくりたい。」発信者を交えて、避難世帯と支援者により、自主避難の方の気持ちを共有するワークショップを行い、同様の気持ちを話し合う場を県内数カ所で開催。
  4. 「パッチワークなど、趣味を生かしたい。」生きがい支援事業として補助制度をつくり、定例の講座の主催者に。生涯学習センターの教室の講師に。
  5. 「大震災・原発事故の避難経験を生かしたい。」地元の防災学習の講師に。自治会で避難所体験を学ぶ講師に。幼稚園のPTAで震災・原発事故の体験を聞く会を企画運営など、多数。
  6. 「震災・津波被災者の交流会」「同じ出身の交流会をしたい。」岩手・宮城交流会やいわき市交流会を開催し、宮城県・岩手県、いわき市からも担当者に出席いただく。
  7. 「仕出し屋をやっていた。」交流会での料理の講師に。「手作り餃子は得意(中国から日本へ)。」流会での餃子づくりの講師。
  8. その他にも「屋内の電気配線の相談なら」「大工でボランティアできないか」「美容師で子どもの髪のカットのコツを教えたい」「子どもの預かりならできそう」「実家にいるので、近隣に避難した方の支えになれば。」「(若い世代の)女子会を開きたい」など、いろいろな声を伺っています。

「三、多様な相談支援の体制」や「四、市町村圏域で一人ひとりをサポートできる環境づくり」は、そこに東日本大震災・原発事故という大変な体験をされた方々の生活経験が生かされてこそ、確かなものになります。それは「広域避難者の支援」を日常生活で「一人のために力をあわせられる地域社会づくり」に生かせる保障でもあり、国や地方自治体が直接その声を聴き生かすことが望まれる次第です。